恐怖の居酒屋
匂いものはダメだ。本当にダメだ。
以前入ったアジアン料理の店で、ビーフンから犬の匂いがした。ダメだ。
隣の席のカップルの女の子が、
「これ、足の裏の匂いがする〜。」と言って笑っていた。
今日は、居酒屋で、猫か犬の猛烈な匂いがした。
猫も犬も好きだけど、その匂いのなかで食事をするのが苦手だ。
気のせいか、ツナサラダがネコ缶の匂いがする。
私の目は、どんどんうつろに。
ナカグマ「ゆ、ゆ、ゆたんぽ‥‥。私、もうダメかも‥‥。」
ゆたんぽ「何言ってんの!これくらい。」
ナカグマ「ここの主人、きっと猫か犬を飼ってるんだ。」
ゆたんぽ「うそ。」
ナカグマ「いや、猫や犬なんかじゃなくって、もしかしたらタヌキかも‥‥。とにかく、すごい匂いだ。」
すると、「まさか。」と言ったゆたんぽの視線が、
私がぐったりともたれている、背後の壁のアタリで凍り付いた。
ナカグマ「何?何かいるの?」(怖くて、振り向けないでいる)
ゆたんぽ「いや‥‥、何でもない。」
ナカグマ「うそ!本当のことを言って!」
ゆたんぽ「‥‥‥‥。」
ナカグマ「‥‥‥‥。」
ゆたんぽ「さっき、ナカグマの上着の中に、黒い物がコソコソって‥‥。」
ナカグマ「‥‥そ、それは、名前の頭にゴがつく生き物かしら?」
ゆたんぽ「ドッキン!」(胸を押さえるしぐさ)
ヒ、ヒャーッ!