忘れてしまいたいこと
ナカグマの過去恥部は数々ありますが、なかでも強烈なのがひとつあります。
ナカグマが中学2年生の時のことです。ナカグマは肩だけはたいそう強かったので、水泳のクロールが速かったんです。校内の水泳大会の女子自由形25mでは優勝したりしました。ここまでは自慢なんですけど、問題はそのあとで、実は25mしか泳げなかったんですよ。なのに、地区大会に抜擢され、100m自由形に出場することになりました。
ナカグマは困りました。夏休みの練習で頑張りましたが、50mそこそこしか泳げなかったのです。本番では足がつったふりでもして、途中でやめようかどうか本気で悩みました。でも、先生に「なぁに、本番になったら死にものぐるいで泳げるものさ。」と言われ、信じてスタートに立ちました。しかし現実は厳しかった。ナカグマは50mを過ぎるとすぐにヘロヘロになりました。水は飲むわ、手足は動かないわ、観客席から見ると、溺れているのか泳いでいるのか、わからなかったと言います。この地点で最下位です。そして75mを目の前にして、ナカグマは「このままでは死ぬ!」と直感しました。そして5m手前で信じられない行動を思いつきました。
なんと、75mのターンで平泳ぎに変更したのです。(個人メドレーか?)観客がかすかにざわついた感はありましたが、ナカグマはそれどころではなかったのです。本当は顔を上げて泳げれば、犬かきでもなんでも良かったのですが、平泳ぎで最後の25mを泳ぎました。滑稽だったでしょうね。みんなクロールなのに、一人だけ顔をあげて平泳ぎしてるんですから。そして極めつけは、それで一人抜いてしまったんですね。
しかし、自由形だけに失格になることもなかったのです。自由形という種目は本当に自由形なんだなって、そのとき初めて実感しました。チームのテントに帰ると笑いの渦で「前代未聞だ!」「自由形で平泳ぎするの、生まれて初めて見たぞ!」「おもしろい!」「平泳ぎが得意だったのか!?」「泳ぎ方を忘れたか?」と騒がれました。ナカグマがどんなに「死にそうで、とても100mをクロールで泳げなかったんです。」と説明しても、どれだけの人が信じてくれたかは知りません。
今、テレビで世界水泳をやっています。ハギトモ(萩本智子選手)カッコイイですね。個人メドレーで金メダル! 10年以上前の夏、田舎の片隅の水泳大会で自由形でメドレー(2つだけど)をやったバカを少し思い出した夏の夜。